友とスッポン(食事中閲覧禁止)(長乱文)

ある日道を歩いていたら、道の端にスッポンが転がっていた。トイレのアレ。
スッポンは俗称らしく、正式名称は通水カップというらしい。勉強になる。


まあそれはいいとして、其が其処にある理由を追求したくて、
となりを歩いていた子に何故こんなとこにスッポンがあるんだろうかと問いかけてみた。


当然そんなの知らないといわれた。ぎゃふん。
しかし引き下がれない私は、もう少し質問を砕いてみることにした。
スッポンとは本来家の中に備えられるものであって、外に転がっていること自体が不自然である。
事の成り行きはともかく、まずは何故スッポンが家から持ち出されたのかを問うた。


すると彼女はこう答えた。
ある人が用を足すためにトイレにいくと、トイレが詰まって使い物にならなくなっていた。
しかし家にはスッポンが無い。このままでは大変なことになってしまう可能性がある。
そこでその人は、スッポンを所有する友人に電話をして、
それを持ってきてもらうことにしたのではないか。



―なるほど、これは納得のいく推論である。
しかし用が済めばただ持って帰ればよい話である。
一体何故道端に転がっていたのだろうか。
この際だから勢いで答えてもらうことにした。


彼女が推理したエピソードはこうだ。


電話を受けた友人は、その人を窮地から救うためにスッポンを持ち出した。
友人宅からその人の家は比較的近距離ではあるが、
幾らかの時間がかかってしまうのは仕方が無い。


電話をした人は、友人に連絡をしてからの間、便意と戦い続けていた。
だが最早我慢の限界である。
その人は家の中で暴発するのはまずいというその思いだけを胸に、
ベランダに駆け出し、蓄積物を解放した。


その人が不幸だったのは、その瞬間を友人に目撃されてしまったことだ。
事故現場を目撃した友人は、あまりのショックでその場にスッポンを落としてしまい、
失意に打ちひしがれながら帰路についた。



ということである。
なかなか奇抜な答えが返って来た。私が一番驚いている。
だが理に適っており、万に一つの可能性が無いとは言い切れない。



すると彼女は私にこう問うてきた。
貴様はどう思うのか。
こんな話するんじゃなかったと思った瞬間だ。



彼女が不特定であるのに対し、
私が誰かを特定できる読者諸君がいるこの状況で書くのも色々といただけないが、
売った喧嘩は買わなければいけないと思うので、拙い推論を書き綴ってみるとする。



スッポンが屋内から持ち出された経緯については全くの同感である。
他に納得のいく説明が出来ない。めんどくさいとも言う。


だがスッポンが道端に転がっていたのは、
私はこういう理由だと考えた。



電話を受けた友人は、歩いて目的地へ向かうことにした。
わざわざ自分を呼ぶくらいの余裕があるのなら、まぁゆっくり行ったっていいじゃないか。
もし一刻を争う事態ならば、もっと他に解決する方法があるだろうと考えたからだ。


しかしこの判断が友人に不幸が訪れる原因となる。結局こいつに不幸は訪れてしまうらしい。
自転車に乗っていたひったくり常習犯に目をつけられてしまったのだ。
自転車にとり、目的のものさえ奪ってしまえば、
あとは全速力で逃走すれば二足歩行など敵ではない。
今宵も無防備な背をした歩行者が前方にいる。目的は黒光りするあの物体だ。


ひったくりはその考えを実行に移した。
犯行は成功を収めた。確かに獲物の感触が手に伝わる。ある意味不幸だ。
しかし成果を確認するよりも、まずはその場から逃走することが肝要である。
ひったくりは全力で自転車をこぎ、十分安全を確認してから手にとったものを見た。


その後ひったくりがどういう行動をとったかはお分かりいただけるかと思う。
黒い部分を持ってたなら尚更だ。



…というのが私の推論である。
納得していただけただろうか。





結論:二人とも馬鹿